鎌倉ハム大安売り

観たものや読んだものの感想など

2023年 この映画が面白かった!ベスト10

2023年、今年もいい映画との出会いが沢山ありました。
 
いくつかの作品は個別記事も書いたのですが、もっとアレについても、コレについても書いておきたかった……
 
名残の供養も兼ねつつ、「今年の映画ベスト10、俺もやりてえ〜!!」の気運高まってきたため、
2023年 この映画が面白かった!ベスト10、
やっていこうと思います。
 
 
 

10位 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎


 
今年一番のダークホース。
鬼太郎については、アニメのエンディングに出てくる化け蟹でギャン泣きしてた程度の思い出しかなかったのですが、評判の良さに釣られて大正解。

昭和の時代を舞台に、旧家が秘匿するおぞましき因習を暴き立てていく、横溝正史的オカルトミステリー。
架空の集落の因習話が、日本全体を蝕む諸問題と共振し、物語スケールを一気に飛躍させる作品構築が見事で、ゾクゾクさせられた。
近親交配を暗示する高級金魚や、喫煙マナーの悪さによる昭和表現(そして、咳き込んでいた女の子は後に……)といった、台詞に依らない映画的演出もハイレベルで見応えがあり、オッ!と唸らされる残酷描写が随所に配置されているのも、ホラー好きとしては高得点。

そしてなんと言っても、物語を牽引する、飄々としたゲゲ郎さんと、裏ぶれた水木のコンビがいい!
今、巷で物凄い人気を博してるのも頷けるふたり。
特にあの、ラスト10分あたりからの彼らは、「あ!あ!?そこがそうなるの!?!?」と、ミッシングリンクが埋まっていく感慨と相まって、涙腺決壊力が半端無い。事前に原作漫画1話を読んでいった程度の私でも、熱いものがこみ上げて来たのだから、生粋の鬼太郎ファンである人にとっては、オールタイムベスト級の一本だったのではないでしょうか。
 
 

9位 リゾートバイト


 
同スタッフによる前作『きさらぎ駅』に続き、豪快なツイストで、ハチャメチャに楽しませてもらったJホラー映画。
 
本作の白眉はなんといっても、原作改変の正当性。

そもそも『リゾートバイト』は、有名ネット怪談としては後発の部類であり、故に、どこかで読んだような展開が多い。
この文脈に着目し「アレ????リゾートバイトのココってさ、あの話のココと同じじゃん???同じって事はさ、くっつくじゃん!!!!!!」とガッチャンコさせ、インターネット怪談ユニバースとでも呼ぶべきモノを顕現させた、その飛躍力!元・洒落怖小僧の私も、これにはたまらずおおはしゃぎ。ネット怪談をここまで丁重に解体、再構築してくれた映画なんて、初めてでは?
お金がもっとあれば『キャビン』みたく出来たんだろうな〜と、低予算邦画ならではの歯痒さはあるが、心意気しかと見届けたッ!枠でのランクイン。
 
豪快にオリジナルチャートを爆進したのに、最後はちゃんと目的地へ着いてしまう、ウェルメイドな鑑賞後感も、本作の醍醐味。
『リゾートバイト』とは、どのような人物の、どのような願いから生じた、禁呪の物語であったのか。
原作の趣旨を真摯に問い直しつつ、どんでん返しも両立させたラストが素晴らしい。
 
 

8位 ヴィレッジ


 
この横浜流星がすごい2023。
 
理不尽を被り、再出発もままならず、ゴミ処理場での過酷な労働に圧搾されてゆく青年・優。
彼を演じる横浜流星さんの芝居に、ただただ圧倒された一作。
髪も髭もボーボーに伸び放題の、くたびれきったスタイリング。苛めや陰口に怒る気力も失せた、亡霊のような佇まい。夜遅く帰宅し、疲れた身体を布団に横たえ、濁りきった目でスマホゲームをプレイする姿から漂う、どうしようもない、どうしようもないどん底感……
横浜流星、ここまで堕ちることが出来るのか!?
俺だって変われるんだ、変わってもいいんだと信じさせてくれる人との出会いを経て、尊厳を取り戻していく中〜後半にかけての演じ分けも繊細で、横浜流星さん、本当に凄い俳優になられたなあ……
ニチアサからメジャーになられた方の中でも、1、2を争う演技派ではないでしょうか。
 
前時代的なパワハラセクハラで勇ましさを誇示しようとする、害悪マッチョイズムの権化・透を演じた、一ノ瀬ワタルさんも凄まじかった。
「この村にハラスメントなんか無えから!」発言といい、強姦する前に、相手の頭を優しげに撫でて和姦ぶる仕草といい、もう、全てが醜悪!
一ノ瀬ワタルさんといえば、コクのあるコワモテの脇役として、ヤクザ映画やヤンキー映画で重宝されてきた方。
順調にキャリアアップを果たされ、大きな役どころでもお見かけするようになってきたのは、『HiGH&LOW』の関ちゃんでファンになった身としても、大変嬉しい限り。
 
現代社会の歪みを寓話的に描き出す脚本・演出が優れていたのは勿論ながら、推せる俳優さんが、ポテンシャルを存分に引き出し活躍されている姿は本当に素晴らしいなと、心から実感させてくれた日本映画。
 
 

7位 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り


https://amzn.to/4aG4OTA
 
4月に映画館で観たとき、「今年の1位や2位になるタイプではないが、6〜8位辺りには着けてくるタイプの良作だな……」とぼんやり思っていたら、まさしくその通り。
こないだ観返したんですが、やっぱり何度観ても面白い。
個別記事はこちら。
www.deldeldelta.com
 
 

6位 エンドロールのつづき


https://amzn.to/41E2UPu
 
インド映画の新たな大傑作にして、「映画の映画」ジャンルにおける新たな大傑作。
 
暮らしが貧しい。
教養にも乏しい。
父親は家業を継げの一点張り。
映画監督を志すには何もかもに恵まれないサマイ少年が、諦めきれず、心のまま、衝動のままに繰り出す映画ごっこ。
瓶のカケラ、マッチ箱、ダンボール、自転車のハンドル、パクってきた廃棄フィルム。
ガラクタで行われる映画ごっこはみすぼらしく、拙く、所詮、子供の遊びの域を出な……
 
えっ、ちょっと待って!?それ、RGBじゃん!画角の概念じゃん!動画になってるじゃん!トーキーじゃん!
こ、この子供、本能と閃きで映画の足跡を辿っている〜〜〜ッ!!!
 
サマイ少年が、観察眼と創意工夫で映画の構造を掴み、遊びの中で資質を磨いてゆく様が、ひたすらに痛快で、眩しい。サマイくん頑張れ!君なら絶対、映画監督になれる!!
てか、こんな有望な少年をほっといたら、インドは国益を損なうよ!?
 
そして、終盤でサマイ君を待ち構える、笑っちゃうくらいベッコベコな敗北描写。
もうね、ヒドすぎて笑っちゃいました。
夢追いジュブナイル映画で、ここまで、ここまでやる事ってある?????
『アベンジャーズ インフィニティー・ウォー』もかくやの徹底敗北。
大人でも泣いちゃうわあんなの!
 
だが尚も折れず、それもまた映画の可能性と、現実をシビアかつポジティブに直視し、『エンドロールのつづき』へと旅立っていくサマイ少年。
このような子を神童と呼ぶのだな……と、最後まで圧倒されっぱなしでした。
 
 

5位 首


 
最低最悪の織田信長を筆頭に、これまたクソみたいな戦国武将達が、暴力や恫喝、腹芸で乱世を渡っていく様を徹底的に冷笑する、北野武監督最新作『首』。
お、お、面白かった〜〜〜!!
 
出だしこそ、お金の掛かった攻城戦描写や、俳優陣の重厚な面構えに「うおっ、北野監督の本格時代劇だ……」と背筋が伸びるも、すぐに「これビートたけしのコントじゃねえか!」と劇場の空気は弛緩。
ワハハ、クスクスと不謹慎な笑いがそこここで漏れ初め、とりわけ秀吉、秀長、官兵衛トリオなんて、もう何をやらせてもお客さん大爆笑(高松城での水上切腹コント、最高!)。秀吉が信長よりお爺ちゃんじゃねえかバカヤロー!と初報時は不安だったのですが、見れば一発で納得ですね。いや~、秀吉はたけしさんで大正解。
光秀と村重の、出てきた瞬間に「あっこいつらに天下はムリだ」と一瞬で理解るダメホモップルも、素敵にダメ!
この二人もさ、水木さんとゲゲ郎さんみたく、もっと界隈が盛り上がってもいいと思うんですよね。
西島秀俊と遠藤憲一のBLだよ!?
 
権力争いを相対化し、茶化す。
北野監督お得意の作風は、コミュニティを支配する価値観が特異であるほど面白く、『ソナチネ』『アウトレイジ』は、ヤクザ社会を題材におかしみを醸した。
ならば武士道に衆道と、更にヘンなしきたりが横行する戦国時代も面白いのでは???との狙いが、ガッチリとハマっていましたね『首』。戦国武将のたしなみを「何バカやってんだ!!早く死ねよバカヤロー!!!!」と、冷めた目で睥睨する秀吉が、最終勝者となるロジックも鮮やか。
 
エンドロールへの入りがまた、あんまりにもあんまりで、徹頭徹尾ヒっドい(褒)映画だったなあ……
 
 

4位 ミーガン


 
映画史における、新たな名モンスター誕生の瞬間であると心の底から確信できた、人形ホラー映画のマスターピース。
2023年度で最もカワイイ映画。
 
www.deldeldelta.com
前に一度、推薦記事を書いているので、今更つべこべ言いません。
タイミングよく12月30日より観放題になったんだから、いいから観ろ!!知る人ぞ知るミーガンちゃんの可愛さを、知らぬ人とて知れ!
年越し映画は『ミーガン』で決まり!
https://amzn.to/3tCtBYe
 
 

3位 ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー


 
Q.
人殺しへの逡巡や呵責は徹底オミットし、殺し屋女子二人組・ちさと&まひろのダメカワ共同生活をポップに描く『ベイビーわるきゅーれ』。
この作品世界に、同じくらい魅力的な殺し屋兄弟を、敵として登場させるとどうなるでしょうか?

A.
俺の脳が灼かれた。
 
 
神村兄弟はズルい。神村兄弟はズルいですよあんなの……
『HiGH&LOW』『孤狼の血』でお馴染み丞威さんに、『ウルトラマンジード』の龍臣プロこと濱田龍臣さん。
この二人が男子校の放課後感覚でワチャワチャ、ワチャワチャやってんだから、そんなの開始5分で好きになるに決まってるじゃん!
好きになるからこそ、好きになるからこそ、彼らのターゲットがちさと&まひろだと判明するときの、あの、目の前が真っ暗になる感じ。ここでタイトルがドーン!なのも完璧。もう、無常感ハンパない。
 
ちさととまひろに負けて欲しくなんかない……でも、でも、神村兄弟にも勝って欲しい……!
映画を観ていて、こんなにも相反する感情で、胸を引き裂かれたのは久しぶり。
戦わなくていい道は無いのか。もっと別の出会い方はなかったのか。だって、食堂でメニューを見ながら、おんなじやりとりしてたじゃん!チュールは人間が食べてもうまいって、一緒に盛り上がってたじゃん!
なのに、なのに、どうして……どうして……
 
自然体な会話の可愛らしさ、切れ味抜群のギャグ(着ぐるみアイアンマンや賭け将棋のくだり、バカすぎる!)、超絶アクションといった『ベビわる』の見どころはそのままに、敵側への感情移入を促すことで、全く余韻を異にする作品となった『2ベイビー』。
めちゃめちゃ面白かったです。
現在撮影中との3作目も楽しみ。もっと公開規模が大きくなってくれれば言うこと無しなのですが……
 

 

2位 怪物


 
学生の頃、深夜にたまたまテレビをつけたらやっていた『誰も知らない』に心奪われ、是枝裕和監督の映画をチェックするようになった私。
今回も、今回も半端ない。
圧倒され、身じろぎもできなくなるとはまさにこのこと。エンターテイメント性と社会的メッセージ、リアルさと寓話性を併せ持つ、只事でない作品へと仕上がっていました。
 
「普通」という言葉が無自覚に帯びる、普通でないモノへの攻撃性。
子供の世界を鋳型に押し込めて安心したい、解った気になりたい、大人の傲り。
こういったものに少年の心が軋み、悲劇を招いてしまう作品は数あれど、『怪物』が放つ現実感、悲壮感は別格。
少年の内面を切り取ってみせる際の、一種危うさすら感じる手つきは、監督の過去作でも存分に振るわれていましたが、題材と技巧がここまでマッチしたのも、何気に初めてではないでしょうか。
まさに2023年という時期に、是枝監督だからこそ撮れた映画と呼ぶに相応しい。
二人の子役、黒川想矢くん、柊木陽太くんを初めとする俳優陣も素晴らしかった。
彼らの銀河鉄道へ、今も思いを馳せずにはいられない。
 
 
こんな推し方をすると、「なんか難しそうな映画だな〜、パルムドール獲ってるし……」と敬遠されそうですが、純粋に、1本の映画としても超面白いんですよ『怪物』。
 
丁寧なグラデーションを重ねて描かれる、"生きた"登場人物達。
誰もがイノセンスで、誰もがギルティ。
彼らの眼を借りながら、慟哭し、衝突し、翻弄され辿り着く真実にアッ…………そういう事なの!?と息を呑む上質なストーリーテリングを、面白い!!!と形容せずして何なのか。
題材がセンシティブで重い為、「面白い」という言葉を使うのに、躊躇いがなくもないが、紛れもなく、面白い、めちゃくちゃ面白い映画なのだ、『怪物』は。
 
現実の諸問題が引き起こす痛みを、優れたエンターテイメントとして提供することで、観客の思考を促し、行動に移す切掛をつくる。
フィクションの力ってそういう事だよな〜と、是枝監督の映画には毎度、蒙を啓かれる思いです。
 
 

1位 ゴジラ-1.0


 
ハイ!!ゴジラ優勝!!!2023年のベスト映画はゴジラ!!!!優勝〜〜〜〜!!!!!!!!
www.deldeldelta.com
 
 
まあ、個別記事で書き綴った通り、気になる面も多い映画なんですよ『−1.0』。
ドラマを語る手つきとしては『怪物』や『エンドロールのつづき』の方が、遥かに巧みなのだが、まあ、ゴジラですからね『−1.0』は。
国産ゴジラ映画はな、映画じゃねえんだよ!!!!祝祭、そう、祝祭なの!!!!!!『シン・ゴジラ』から7年ぶりの、特撮のオタクの祝祭!!!!だからゴジラ!!ゴジラが優勝!!!G・O・D・Z・I・L・L・A!!!!ゴジラ!!!!!!!!ギャオオオオオオオン!!!!!!!
 

 
誤解なきよう記しておくと、「ゴジラだからこんなもんでいいか……」と、妥協した産物の1位という訳では、決してなく。
 
個別記事にも書いたが、私は山崎監督の、『シン・ゴジラ』と対峙する姿勢に、何よりも胸が熱くなった。
あちらがドライなら、こちらはウェット。あちらが陸なら、こちらは海。あちらが官僚なら、こちらは民間……と、徹底的に逆を張り、見事、『シン・ゴジラ』とは対極の作品性を持ちつつ、『シン・ゴジラ』にも負けない、傑作ゴジラ映画を撮りあげてみせた。
監督の矜持が、情熱が、心意気が、何よりもドラマチックで、胸を突く。
多少の欠点など、容易く凌駕する。
そういう気持ちにさせられたのだ。
 
2023年の1位は『怪物』とギリギリまで迷ったんですけども、もうね、こんなん観せられた年なんだから、『ゴジラ−1.0』が1位!
山崎監督ありがとう!年明けたら、マイナスカラー版も観に行きます!!
 
 

おわりに

 
10位 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
 
9位 リゾートバイト
 
8位 ヴィレッジ
 
7位 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
 
6位 エンドロールのつづき
 
5位 首
 
4位 ミーガン
 
3位 ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー
 
2位 怪物
 
1位 ゴジラ−1.0

 
 
という訳で、私の2023年ベスト10映画でした。
 
皆さんもよいお年を〜。