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観たものや読んだものの感想など

2023年9月時点 amazonプライムビデオおすすめホラー映画

やっぱり夏といえばホラー映画。
山にも海にも花火にも行かず、
キュウリが大嫌いで冷やし中華も食べない私にとって、
最も夏を感じられるのがホラー映画。
  
という訳で今回は、2023年9月時点のamazonプライムビデオにて、私がこの夏に観て面白かった、無料視聴が可能なオススメホラー映画を挙げていきます。
「こういうのって普通、夏始めの7月にやらない??」って感じしますが、思いついたのが9月に入ってからなのでしょうがない。まあ、まだまだクソ暑いんだから、まだ夏!!夏だよ!!
 
 
 

エクソシスト


 
無垢な少女がある夜突然、化物のような形相になって暴れ出した。
神を罵倒し、汚物を撒き散らし、ポルターガイストで家を破壊していく娘の扱いに困り果てた家族は、教会の神父を招き、悪魔祓いを依頼する……
  
ホラー映画史に燦然と輝く、悪魔祓いモノの偉大なるメルクマールといえばウィリアム・フリードキン監督『エクソシスト』。
なにぶん古い映画なので、女の子が緑のゲロを噴きながら暴れる場面などはグレート・ムタみたいで、怖いというよりも面白かったりしますが、瞠目すべきは「何も起こっていないシーン」の不気味さ。中東の遺跡発掘現場、荒野に佇む悪魔パズズの像、ジョージタウンの陰鬱な街並み、空虚な社交パーティに耽溺する人々……と、怖い事はまだなにも起きていないのに凶兆を放つショットの数々は流石フリードキンといったところで、令和でも全然戦えます。特に決戦の夜、デミアン・カラス神父が依頼主の屋敷に訪れる場面はひときわ格調高く絵画的。
そうそう、カラス神父。主人公のデミアン・カラス神父がスゲー良いの『エクソシスト』。信仰の揺らぎに日々悶々とし、仕事のあとは安アパートで母親を介護するだけの人生を送っている、くたびれた、渋面の独身男。遂には、ただひとつの生き甲斐だった母親まで認知症を悪化させた末に亡くなってしまう……
そう、カラス神父自体がまず、誰よりも神の助けを欲している、今にも折れそうな限界中年男性なのだ。そんな限界中年のカラス神父が、自分だってとても辛いのに、より弱きものを悪魔から守るため精一杯強くあろうとする姿は、男としてあまりにも立派で、今この時代に『エクソシスト』を観る意義が詰まっているとすら思う。後続の心霊憑きモノって、神父や霊能力者のキャラクター性が盛られがちなのだが、この時点でメチャメチャにヒロイックだったのだなー。「実はエクソシストって観たことねえな」という人も、この機会に是非、『エクソシスト』を、デミアン・カラス神父の男道をご覧になってはいかがでしょうか。
 
あ、最後に一点だけ!『エクソシスト』名物、ブリッジしながら階段を降りてくる少女はディレクターズカット版にしかないので、そっちが観たかったら通常版ではなく、ディレクターズカット版で観てください。
 
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マリグナント 凶暴な悪夢

 
 
横暴な夫デレクのDVに怯えながら暮らすマディソンは、ひときわ手酷く痛めつけられた日の夜中、"怪物"が夫を惨殺する場面を見てしまう。慌てて警察に通報するも、無残な夫の死体がリビングにあるだけで、強制侵入の痕跡などは全くなし。
夫から暴力を受けていた事情も重なり、次第に疑いの目がマディソンに向けられる中、彼女もまた"怪物"による第2、第3の殺人を幻視するようになっていく……
  
今、「あ〜はいはい、そういう話ね」って思いませんでした???
実際、本作『マリグナント』は、少しでもホラーやサイコスリラーに馴染みのある人なら、すぐに「あ、裏人格モノかあ」って察せちゃうんですね。恐怖演出は冴えまくってるし、マディソンの過去を少しずつ開帳していく語り口もスリリングだが、お話自体は『ジキル博士とハイド氏』から散々擦られてきた、"怪物"とは私の中にいるもう一人の私系ホラーの域は出てないなって。
しかし、しかし、そこからがジェームズ・ワン監督の鬼才たる所。
物語が進み、"怪物"がとうとう表に出てくるときの、その顕れ方が、到底、常人の発想では思いつき得ない突飛さ!『ソウ』で一斉を風靡した監督らしい、空前絶後でありながらもヒントはいつだって提示されていた、鮮やか、鮮やかにも程があるドンデン返し。
しかも、ここからがまたスゴい。『ソウ』は正直、意表を突いただけ感が否めなかったが『マリグナント』は違う。タネ明かしと同時に、映画自体も豪快にシフトをチェンジし、更に見る者を楽しませてくれる。なんか思ってたのと違う方角へドライブしだしたがコレはコレでめちゃめちゃ面白い!!無駄に広かった留置所のセットもこの為だったんか!!!!!と、初見時は赤ちゃんみたいに手を叩いて喜んじゃいました。
『ソウ』『インシディアス』『死霊館』といった名ホラーシリーズを築きあげ、『ワイルド・スピード SKY MISSION』『アクアマン』のような派手なアクション作品もお手のものなジェームズ・ワン監督。彼の歩んできた両キャリアが見事に融合した快作、それこそが『マリグナント 凶暴な悪夢』なのだ。
 
amzn.to
 
 

ウィッチ


 
舞台は16世紀開拓時代のアメリカ。宗教観の相違から村八分にされた父・ウィリアムは妻と4人の子供達を連れ、陰鬱な森林の広がる僻地へと移り住む。信仰を拠り所に新たな暮らしを始めた家族であったが、貧しさは日々、彼らの心身を疲弊させていく。そんな折、長女トマシンが世話をしていた、末っ子のサムが森で行方不明に。
「目を一瞬離した隙にサムが消えた!」とトマシンは抗弁するが、家族は次第に「トマシンが魔女として、サムを悪魔に捧げたのではないか?」との疑念を抱きはじめ……
 
生活上のあらゆる不満を信仰・戒律で押し込めてきたキリスト教徒の極貧家庭が、度重なる超自然的現象によって決壊していく一部始終を、何の彩りも無い灰色のトーンでじっくりねっとり描きあげる、厭味1000パーセントの暗黒ホームドラマ映画『ウィッチ』。
本来寄り添いあう筈の家族同士が、肥大する疑心暗鬼と他罰感情の捌け口に長女を吊るし上げる「家の中の闇」。あらゆる風景が不吉なバイブスを放ち、広大な森には人ならざる"何者か"の気配が満ちる「家の外の闇」。逃げ場のない闇による挟みうちが多感な思春期の長女・トマシンをじわじわネチネチ追い込んでいく様はこれでもかと陰湿で、周到で、べっとり肌に纏わりつくような圧迫感が半端ない。自分の見たいモノだけを見るために際限なく曇ってゆく人の眼と、多数決の原理が掛け合わさり、十六世紀の中世を象徴する最悪の地獄が家族の間に現出していきます。
 
そしてこの映画、争点となる「魔女」の描写もすこぶる巧み。

過剰な信仰心や社会不安、他罰思考の生み出す形無きスケープゴートが「魔女」なのか。

それともあの昏い森に、子供を攫って食べる本物の「魔女」が住むのか。

どちらとも、どちらとも取れる塩梅で繰り出される悪夢的映像(これがまたスゲー怖い)により、視てるこっちもだんだん現実感を失調し、「魔女いるの???いないの???」と、劇中人物の気持ちとシンクロしてくるんですね。そうやって散々、揺すりに揺すってきた後、「果たして魔女とは何だったのか?」の本映画独自解釈を、真正面からドーンとぶつけてくるあのラスト!!名ラスト、名ラストですよ。私はしばし、身じろぎも出来ないほど見入ってしまいました。
魔女モノの決定版と呼ぶに相応しい隠れた名作『ウィッチ』。
季節の変わり目の今だからこそ観て、どんより厭な気分になろう!レッツウィッチ!
 
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笛を吹く男


 
息子ヨンナムを医者に診せるため、ソウルを目指し旅を続ける楽士・ウリョン。長旅の疲れを癒やすため、親子は偶然立ち寄った山間の集落に逗留する。
「戦争が終わっていることは言わないでくれ」との村長による口止め、儀式を司る"巫女"の存在、過度に排他的な村民と引っ掛かる点の多い村であったが、最も異様なのは、凶暴化して家畜や猫、赤子を襲うネズミの群れ。見兼ねたウリョンは、自身の特技、笛を使っての駆除計画を持ち掛ける……
 
ドイツ童話『ハーメルンの笛吹き』を自国流に翻案した、2016年公開の韓国ホラー映画がこの『笛を吹く男』。
ハーメルンの笛吹きを原案にピックしている時点で、何となく察せられますよね。「ネズミを駆除したウリョンは村人の感謝と信頼を勝ち取り、約束の報酬もたっぷり貰いました。めでたしめでたし」で終わる筈がないのは。
なのでネズミ退治以降は、おのずと対ショック姿勢を取りながら、恐る恐る観るワケなんですが……ブチ破られます!どんなに心の防御力を高めていても、余裕でブチ破ってくる胸糞映画ですよこれは!!心底最低な因習でコミュニティを維持してきた村人達の、嫉妬、猜疑、同調圧力にまみれた手前勝手な理屈が牙を剥き、映画の風向きが完全に変わってしまう瞬間が、もう、もう、もう、あまりにも凄惨で、人として最悪だよお前ら!!!!!!排他的な村人がウリョン親子に心を開いていく過程を、感動ヒューマンドラマ的タッチで暖かく描き、「ああ、誠意ってのは伝わるんだな」とほんわかさせておいてからの持ち上げ落としは職人芸の域で、ウリョンの慟哭が堪える堪える……人心破壊の天才かこの映画撮ったやつ???

しかし本作の原案は、重ねて言いますが『ハーメルンの笛吹き』。笛を吹く男がやられっぱなしで終わる訳がなく……
ド胸糞映画『笛を吹く男』の末に待つカタストロフ、是非ともその目で確かめてみて下さい。
 
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戦慄怪奇ファイル コワすぎ!


 
『ほんとにあった!呪いのビデオ』以降しこたま類似品がリリースされた、玉石混交と呼ぶにはやや石の割合が多すぎる、投稿映像心霊ドキュメンタリーと呼ばれるジャンル作品のひとつ。
最初は誰もがナメていた(というか知らない)シリーズだったが、2014年の、ニコニコ動画における一挙放送を切欠に状況は激変。
「口裂け女を車で轢く」「陰陽道で肉体を強化し河童と殴り合う」「花子さんに突っ込んでタイムリープする」「防衛庁の機密保持者を金属バットで殴り拉致する」に代表される、心霊ドキュメンタリーの範疇を何層も何層もブチ破っていく豪快な展開の数々や、確かな実体を伴って姿を顕す怪異、狂ってしまった(目覚めてしまった)人達のバキバキにヤバい質感、キャラ立ちしまくりの霊能力者、恫喝と暴力で怪異に立ち向かう取材班などが好事家のハートをがっちりキャッチ。
心霊ドキュメンタリーに留まらず、伝奇バトルや少年マンガ、シスターフッドといった様々なジャンルの旨味を内包する全方位エンターテイメント作品であることが周知されていき、ニコニコ動画で一挙放送が行われる都度、指数関数的に人気と知名度を獲得していく様は、低予算ホラービデオ界のシンデレラと呼ぶに相応しい躍進ぷりだった。
 
「実験だよ実験!」「五芒星の中心に工藤が立ち河童を迎え撃つ」といったパンチラインで手っ取り早く盛り上がるもよし、作品世界に一貫した緻密なロジックを考察するもよし、勿論ホラーとして恐怖表現に怯えるのもよしと、一時期の『コワすぎ!』は和製ホラー界隈で最も勢いのあるシリーズだったのだが、カメラマン・田代として本作に自ら出演もする白石晃士監督が多忙のため、長らく凍結状態にあった。しかし、この度9/8に6年ぶりの最新作『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』が公開となり、ファンも往時の盛り上がりを取り戻している。
私もつい前日観てきましたが、シリーズの集大成かつ、新たな地平にも殴り込んでいてメチャメチャ面白かったです最新作。まだ『コワすぎ!』未見の方、この機会にシリーズを履修して、劇場で工藤さん達を応援しよう!
 
amzn.to
 
この辺りも観ておくとよりシリーズを味わい尽くせます。

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きさらぎ駅


 
『きさらぎ駅』とは、2004年1月8日、匿名掲示板2ちゃんねるのオカルト板「身のまわりで変なことが起こったら実況するスレ26」にて、ハンドルネーム・はすみ氏により投稿された「いつもの通勤電車に乗っていると、奇妙な無人駅に迷い込んでしまった」という超常現象体験に付けられた通称。
はすみ氏が今まさに怯えながらアドバイスを求めている臨場感や、スレ住人との間で逐一応答が交されるインタラクティブ性が刻み込まれた当スレッドのログは瞬く間にインターネットを駆け巡り、『きさらぎ駅』は一躍有名怪談となった。
その『きさらぎ駅』を2022年に映画化したものが本作。
 
「え???今更きさらぎ駅????」と思われるかもしれない。
私も最初はナメていた。
だが本作は、手垢に塗れた古典インターネット怪談を語り直すにあたって、昨今流行りのとある要素を大胆に取り入れ、ガラリと変貌……いや、飛躍と呼ぼう。飛躍だ。「令和の今だからこそ面白いきさらぎ駅」へと見事な飛躍を遂げている。
きさらぎ駅なんて誰でも知ってる話じゃん!という今更感を逆手に取り、今更であればあるほど、知っていれば知っているほど、より一層、劇中主人公の行動にライドできる作りは、間違いなく本企画における面白さの最適解だったと私は思う。最早ホラーのジャンルすら怪しくなる大暴走の末にはしっかりホラーへと戻ってくる、車庫入れの上手さも大変好みだ。『魔進戦隊キラメイジャー』『仮面ライダービルド』『ウルトラマントリガー』と、比較的新しめの三大特撮番組から何故かひとりずつキャストが出演しているのも特撮ファンには嬉しい。

2ちゃんねる怪談が原作の映画といえば、元の話と似ても似つかないゾンビ物に成り果てた『クネクネ』や、ショットガンを持ったデブが悪目立ちする『ことりばこ』と控えめに言ってもカス揃いだった中、一際キラリと輝きを放つ『きさらぎ駅』。ネット怪談映画もまだまだ捨てたものじゃない……のかもしれない。
 
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エスター ファースト・キル


 
絵を描くのが得意で、頭もよく、とても礼儀正しい女の子エスターを、孤児院から引き取って家族へと迎え入れたコールマン夫妻。見立て通りいい子に思われたエスターだったが、次第に狡猾で凶悪な本性を顕にし、家庭を破壊していく……2009年の大人気悪ガキホラー『エスター』12年ぶりの続編にして、前日譚となるのがこの『エスター ファースト・キル』。

「でも『エスター』ってさ、エスターの正体にサプライズがあった映画じゃん???エスターが○○○だとバレてる上でもう一回やってもしょうがなくない???」

と、『エスター』を観た多くの人は思うでしょう。私も思ってました。
そしたら『ファースト・キル』、なんと発想を逆転させ、エスターを主人公にしたッ!!
本当は○○○なエスターが、いい子のフリをしながら、洞察と機転を働かせ、他人の家庭になんとか滑り込もうと必死で頑張る映画。それが『エスター ファースト・キル』なのだ。あんなバケモノに感情移入できるのかよ!?と思いきや、乙女故の悩みからセンチメンタルになったり、潜り込んだ家が予想外に異常で狼狽えるエスターを見ていると、家庭破壊モンスターの地道な舞台裏を覗ける楽しさも相まって、すっかりエスター応援モードになってしまうこと間違いなし。
「ホラー映画のバケモノだって、サバイブする為にめちゃくちゃ努力してんだよォ!!!」と心の叫びが全編にこだまする『エスター ファースト・キル』。『エスター』を観た人なら絶対面白いので観てください。観てない人は是非『エスター』から観て貰ってですね、続けて『エスター ファースト・キル』を観てください。逆は絶対ダメよ!!
 
余談になるが、1作目から13年が経過しているのにも関わらず、当時は子役だったイザベル・ファーマンが再びエスターを演じている。9歳の少女を23歳の俳優が演じるにあたり、メイクや照明のみならず「エスターが使う小道具を大きめに作る」「極力、全身が映る状態で大人と並ばせない」「後ろ姿のシーンでは子役を使う」といった様々なアナログ技巧が動員されており、なんとCGは使われていないとの事。あ、ここ、エスターを子供に見せるためなんかしらの工夫をしているな……と、仕掛けに想像を巡らせながら観るのも楽しい一作。
 
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タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

 
 
いつも一緒につるんでいる、モテないオジサン二人組のタッカーとデイル。格安で買い取った森の廃屋をリフォームし、オレたちのイケてる別荘とする計画で盛り上がる彼らであったが、コワモテでブサイクな容貌が災いし、キャンプに来た大学生グループから殺人鬼だと誤解されてしまう……
 
本作は『13日の金曜日』『悪魔のいけにえ』に代表される、スラッシャー(殺人鬼)映画と呼ばれるジャンルのパロディムービー。
アマプラのジャンル区分こそホラーではあるが、繰り広げられるのは「湖に落ちた女子大生をボートで助けてあげたら、向こう岸の大学生グループから誘拐だと勘違いされる」「伐採作業中ハチに襲われたので慌てて飛び出したら、チェーンソーを振り回して追いかけてくる殺人鬼にしか見えず逃げられる」といった、悪気は無いのになんでこうなっちゃうんだよ系ドタバタコメディなので、ホラー映画が苦手な人でも笑って楽しめること間違いなし。大学生の何人かは派手な血しぶきをあげて死にますが、まあ、ギャグっぽく死ぬので大丈夫でしょう!
『タッカーとデイル』はブラックで上質な笑いを提供してくれるコメディ映画でもありつつ、湖で助けた女子大生・アリソンに一目惚れしたデイルが、容姿に根ざす自己評価の低さを克服し、彼女に相応しくあろうと立ち上がる、熱い青春映画でもある。殺人鬼の象徴である「とあるアイテム」が正義の為に、大切な人を守るために振るわれる瞬間の、文脈がバッチバチに乗ったカタルシスたるや……!アリソンの事で頭がいっぱいなデイルに、男ふたりでワイワイできる時間が減っちゃうなァと若干の寂しさを抱きつつも、「お前は本当は強いし、頭もいいんだって、俺は昔から知っているよ」とデイルを励まし、恋路を後押ししてやる親友のタッカーもカッコいいんだよなコイツ!!!分かる、分かるよその気持ち!俺も気がついたら友人があらかた結婚してたからさァ……分かるよ……

殺人鬼パロディ映画として打点が高いだけでなく、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『スーパーバッド 童貞ウォーズ』等と並ぶ、イケてない男の友情エモムービーの傑作でもある『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』。オススメです!
 
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M3GAN/ミーガン


 
「イカ臭いオスガキのチャッキーとか、ババ臭いアナベルとか、クソデカ恐怖人形とか、人形ホラーの人形がブサイクなのそろそろやめにしない????可愛い美少女ドールが襲ってきた方が絶対お得だって!!!!!!」

とジェームズ・ワン(今回は監督ではなく製作でクレジット)がこの世の真理に辿り着いた……のかどうかは知るところでないが、とにかく金髪碧眼白タイツの少女人形による殺戮を、これでもかと可愛く、カッコ良く、フェティッシュに撮りあげた、2023年を代表する快作ホラー映画『M3GAN/ミーガン』。
モンスター系ホラー映画って「怪物を倒す人間を応援する」タイプと「人間を殺していく怪物を応援する」タイプの2種に分かれると思うんですが、『ミーガン』は断然後者。可憐と不気味の境界キワキワを攻めるドールフェイスに、角度や照明といった演出が加わることによって、歓喜、慈しみ、憂い、悲嘆、軽蔑、殺意といった様々な感情を湛えているように見えてくる「無表情なのに表情豊か」具合が只事ではなく、平たく言ってめちゃめちゃカワイイ。特に、高性能を見せつけた後や、邪魔者を片付けた後にドヤ顔っぽく見えるカットが頻繁に挟まるのが最高!「キャーッ!!!ミーガンちゃん!!!ミーガンちゃんかわいいい!!!!!!もっと殺って!!!!ちっちゃいぷにぷにおててで耳をちぎってーッ!!!」と、完全に殺戮応援モードですよ。殺される面々が揃いも揃ってイヤな奴揃いなので、全く心が痛まず爽快なのも助かる。
オーナーであるケイディちゃんとの関係性も、姫を守護する騎士然とした気高さすら漂っており、幼い少女同士のシスターフッドムービーな側面も強いので、そっち方面が好きな人にもオススメ。

文脈こそ人形ホラーなものの、心霊要素ゼロのAIクライシスモノである『ミーガン』。是非、ホラー映画が苦手な人にもその可愛さを知って欲しい……!本国ではミーガンダンスが大バズりし、すでに続編制作も決定していると、間違いなく、間違いなくホラー映画の新しいアイコンとなる名モンスター誕生の瞬間である。だから絶対観て!!!
  
www.youtube.com
 
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あとがき

 
今回はアマプラ無料作品のみを推薦する趣旨だったのだが、ふとストアを開いたら『M3GAN/ミーガン』がレンタル開始していたので、最後だけ有料作品を紹介させて貰った。
ミーガンちゃんが可愛過ぎるのでしょうがない。