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出た!外星人メフィラスだ! 映画『シン・ウルトラマン』解説


興行収入30億を突破し、絶好調の『シン・ウルトラマン』。
 
魅力的なキャラクターが多数登場する本作の中でも、とりわけ人気を博しているのが外星人0号・メフィラス。劇場公開後すぐさま「メフィラス構文」がネットミーム化し、ウルトラマンを差し置いて彼の名刺が来場特典に選ばれる、メフィラスとは一体何者なのか?演じた俳優は?恋人は?経歴は?年収は?好きな言葉は?調べてみました!
 

前回のシン・ウルトラマン感想記事はこちら。
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山本耕史、私の好きな俳優です。


柔和な物腰。知的な物言い。人当たりのいい笑顔。なのに、そのどれもが貼り付けたようにうさんくさく、うさんくさいのに、彼の言葉には耳を傾けずにいられない魔力がある。
そんな妖しさ満点の怪紳士、メフィラス人間態を好演するのは、実力派俳優の山本耕史さん。
赤ちゃんモデルとして、なんと0歳から芸歴のある超大ベテランであり、若手二枚目俳優として活躍された90年代を経て、尚も今、TVに舞台に映画に引く手あまたの名俳優です。
 

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皆さんは「山本耕史さんの当たり役」と言えば何を思い浮かべるでしょうか?

私はやはり、2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』の石田三成
時代の趨勢を読んだ諸大名が次々に徳川側へ流れていく中でも、最後まで豊臣側を離れなかった忠義の男。刺々しい物言いと几帳面過ぎる性格が敵を作りがちな一方、源次郎や大谷には不器用な信頼を寄せていた様が微笑ましく、観ていて応援したくなるキャラクターでした。
映画刀剣乱舞 継承』の織田信長も良かったですね。主人公の刀剣男子・三日月宗近がその死を尊び義理立てようとする主君に相応しく、天下人のカリスマ迸る名演ぷり。三日月宗近役の、鈴木拡樹さんとの掛け合いがまた素晴らしいんですよ……『新選組!』の土方歳三役も有名ですし、今もNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にて小四郎の旧友・三浦義村を演じられていたりと、時代劇映えするお方でもあります。

特撮作品では一足早く『仮面ライダーゼロワン』にて仮面ライダー1型へと変身しておられる山本耕史さんですが、『シン・ウルトラマン』では敵の宇宙人という役どころ。
堀北真希さんに40通以上のラブレターを送っても返事が返ってこなかったのに、彼女が乗る予定の新幹線へ乗り込みプロポーズをしたり、香取慎吾さんが席を外した隙にすかさず携帯電話を取って電話番号を手に入れるなど(注1)、イカレたエピソードのオーナーとしても知られる山本耕史さん。しかし堀北真希さんとはその後円満に結婚し、香取慎吾さんとも親友の仲になっているので、もしかしたら、人心掌握が巧みなメフィラスと共通の因子を有しているのかもしれません。

 
(注1)香取慎吾さんは友人をあまり作りたがらない事で有名であり、携帯番号も非通知にしている徹底ぷりであるが、山本耕史さんは「番号の前に186を付ければ相手の携帯に表示される」というテクニックを使って香取さんの携帯から自分の携帯にかけ、電話番号を手に入れていた。しかしかけてもかけても一向に出てくれる気配が無いので、留守電に「俺をなめるなよ!」とメッセージを吹き込んでおいたら、ようやく反応が返ってきたという。

 

巧言令色、私の好きな言葉です。


「メフィラス構文って何なのよ!?」という人向けに、代表的なメフィラス構文及び、その他の印象的な台詞について解説していきます。


「○○、私の好きな言葉です」
最も代表的なメフィラス構文。
四字熟語や格言を巧みに使いこなし「私の好きな言葉です」とすかさず添える事により、地球の文化及びそれを生み出した人間への親愛を過剰にアピールする、胡散臭さ炸裂の一節。「言葉」を強調するのは恐らく『ウルトラマン』におけるメフィラス星人登場回のサブタイトル『禁じられた言葉』からの着想でしょう。


「○○、苦手な言葉です」
上記と対になるメフィラス構文。
「嫌いな言葉です」ではないのがポイント。紳士を標榜するメフィラスらしく、「和」を重んじる日本のスタイルへ迎合しつつ、難色は控えめ目に示す。「捲土重来」を苦手な言葉として挙げているのが、引き際の潔い、初代メフィラス星人へのリスペクトを感じさせます。


「私を上位概念として存在させて欲しい」
平たく言えば、「メフィラスを神として信仰し、崇拝しなさい」という事。初代『ウルトラマン』における名文句「私が欲しかったのは、人間の心だったのだ」の、冴えた翻案です。
キリスト教のクリスマスを祝い、ケルトのハロウィンでも騒ぎ、ヒンドゥーのシヴァや道教の南極老人を七福神に纏めてしまう、アバウトな宗教観の持ち主である日本人。メフィラスがぬるりと受け入れられている未来も想像に難くない。


「河岸を変えよう」
殆どの人は聞いた瞬間、比喩だと思った筈。
なのに場面転換後、本当に居酒屋へしけこんでる外星人がいるか!


「割り勘でいいか、ウルトラマン」
居酒屋での談合が決裂に終わった帰り際、メフィラスが言い放つ一言。
「奢るつもりだったのに、交渉が決裂したから当て擦った」「神永は公務員なので、奢ると収賄になっちゃう為、気を遣った」等諸説あるが、財布の中身をチラリと確認するそぶりがあることから「本当にお金が足りなかった」説がやや有力(公式見解を待ちたい)。
いずれにせよ、飲み物に少し口を付けただけのウルトラマンが、上機嫌でパクパク飲み食いしていたメフィラスと割り勘なのはひどい。余談だが、このシーンで一瞬映る居酒屋の主人は『孤狼の血』『凪待ち』『彼女がその名を知らない鳥たち』『ひとよ』等の傑作で知られる映画監督・白石和彌。


「ウルトラマンともあろう紳士が、このような変態行為に及ぶとは……」
ベーターシステムに残された浅見の体臭(ここんとこ家に帰れずシャワーも浴びてない)を辿り追跡してきたウルトラマンへの、メフィラス怒りの一言。
理知的な振る舞いが憤怒によって綻びかけているのを、必死で押し留めんとするメフィラスの形相に1000000000点。山本耕史さん、良い表情筋の使い方をなされる……


「よそう、ウルトラマン」
初代『ウルトラマン』において、ウルトラマンと伯仲の戦いを繰り広げていたメフィラス星人が、これ以上は無意味と悟り、停戦を申し出る時の名文句。
『シン・ウルトラマン』では、エネルギー変換効率の差により戦いを有利に進めていた所なのに、地球に来ているゾーフィの姿を目視したことが切掛となり、停戦の運びに。この展開は「ウルトラマンとメフィラス星人が戦って互角なら、3分間粘ればメフィラス星人勝てるんじゃないの?」という定番ツッコミへの潰しにもなっています。


「さらば、ウルトラマン」
ウルトラマンが迎える最大の試練を暗示するような、メフィラス去り際の一言。勿論由来は『ウルトラマン』の最終回『さらばウルトラマン』。
あれほど地球を好きだ好きだと言っておきながら、あっさり損切りしていくメフィラス。
口下手で不器用でも、巌のように身を呈し、最後の最後までゼットンに立ち向かってくれるウルトラマン。
どちらが真のヒーローだったかは一目瞭然ですね。

原点回帰、私の好きな言葉です。


ここで、初代ウルトラマン第33話『禁じられた言葉』に登場する、元祖メフィラス星人を振り返ってみましょう。
ただでさえ人気者揃いな初代怪獣の中から、シン・ウルトラマンにおいて見事登場キャラクターへと選抜されたメフィラス星人。放送から55年経ってもなお愛される、メフィラス星人の魅力とは?


・斬新な侵略エピソード 
人気怪獣には優れたエピソードがつきもの。メフィラス星人も例外ではありません。
メフィラス星人は武力の行使を好まず、人間の子供に取引を持ちかけることで地球を手に入れようとしました。彼の提案を呑めば強大な力を得られるが、代償に、地球の所有権を移譲する事となってしまうのです。
一個人に「地球を貴方にあげます」と言わせるだけで侵略が完遂する仕組みは判然としないものの(言霊か契約か、はたまた縛りプレイの一環なのか)、抽象的であるが故に底の知れない、不気味で悪魔的な手口は多くの視聴者を虜にし、様々な解釈を生み出しました。外星人メフィラスが、ベーターシステムの技術供与と引き換えに政府と密約を交わしていたのだって「地球を貴方にあげます」の、今風な翻案なのです。


・宇宙人達のリーダー格
メフィラス星人の合図と共に、バルタン星人、ザラブ星人、ケムール人が出現し、科特隊を包囲する。今までに苦労して倒した強敵達は、メフィラス星人の走狗でしかなかったのだ……
メフィラス星人の大物ぷりを鮮烈にアピールした名場面。バルタン星人達は特に何もせず消えてしまい、ウルトラマンとのリターンマッチに至らなかったのは少し残念ですが、名ただる宇宙人を従えるメフィラス星人のカリスマは、多くの視聴者を魅了するのに十分でした。
メフィラス星人の芯として欠かせない要素であり、後続のシリーズでも、複数の宇宙人を統率するリーダー的役割をあてがわれる事が多い。


・強い
そして、強い。メフィラスは奸佞邪知の曲者であるだけでなく、ひとかどの武人でもあったのだ。
暴力は嫌いだと宣言し、心への侵略を好み、部下だけを前線に送っていた宇宙人が、いざバトルとなれば空中戦、格闘戦、光線の撃ち合いあらゆる部門においてウルトラマンと互角に渡り合う。か、カ〜ッコイイ〜〜!!!コーエー三国志風に言うと武力統率知力政治魅力全てが90以上。こんな悪役、好きになっちゃうに決まっているでしょ……
ここまでの『ウルトラマン』に登場した宇宙人はいずれも、謀略には長けるがパワフルさに欠けるタイプで、バトルではあまり強くないのが様式だったのを踏まえると、よりメフィラス星人の別格さが際立ちます。ウルトラマンに勝ったものの人間にあっさり爆破されるゼットンより、互角の戦いの末、生還を果たすメフィラス星人の方に「格」を感じた視聴者も多かった筈。


・デザインが良い
ここまでは内面的な魅力を挙げてきましたが、メフィラス星人は外見も格好いい。
黒猫。蝙蝠。サングラスを掛けた悪漢。ワルで不吉なモチーフを連想させる禍々しいデザインは、芸術家・成田亨先生の手掛けた『ウルトラマン』怪獣後期の力作であり、元画のシャープさを保ったスーツも、当時のスタッフに「特に出来が良かった1体」と評される程。黒ずくめの中でアクセントとなる蒼い瞳と、イエローの発光器官がなんとも美しい。ちなみに名前の由来はゲーテの戯曲『ファウスト』に登場する誘惑の悪魔・メフィストフェレスより。

あなたがたが罪悪だ破壊だと呼ぶもの。
つづめて言えば、悪とお呼びになる一切のものが私の本来の成分です。

出典:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 『ファウスト』

 

親戚知己、私の好きな言葉です。


元祖メフィラス星人や外星人0号・メフィラス以外にも、ウルトラシリーズには様々なメフィラス星人が登場してきました。いくつかを紹介します。


メフィラス星人二代目
ウルトラマンタロウ27話『出た!メフィラス星人だ!』に登場。
「ウルトラマンと互角に戦った、あのメフィラス星人が帰ってきたッ!!!」と期待を大きく煽ったものの、やってきたのはトンチキデザインの自動販売機で子供を襲う三下。知性が感じられない粗野な言動と、かつての見る影もないダルダルの造形でファンを落胆させ、『帰ってきたウルトラマン』のゼットン二代目と共に「リバイバル怪獣はガッカリ」の印象を刻んでしまった戦犯。
しかし、「メフィラス星人にも色んな奴がいるんだなあ」とキャラクターの幅を広げた功績は大きく、後続のシリーズでは結構リスペクトされています。『シン・ウルトラマン』のメフィラスが地球の格言を好むのだって、二代目の名言「卑怯もラッキョウもあるものか!」の流れを汲むのですから(特に「目的の為に手段を選ばず」を苦手な言葉に挙げているのは、明確に二代目からの逆算)。このような再評価も、長寿シリーズにおける醍醐味のひとつ。


メフィラス星人(レッドマン)
ゴモラと一緒にレッドマンを襲撃。時々ゴモラにも殴られており、いまひとつ統制が取れていない。ダウン中もレッドマンから執拗に殴打され、最後はレッドアローを刺されてゴモラ共々死んだ。

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メフィラス星人(ウルトラマンメビウス)
47話『メフィラスの遊戯』に登場。
二代目から一転、初代路線の大物メフィラス星人であり、皇帝四天王最後の強者。「もし、メフィラス星人に地球をあげるとどうなってしまうのか?」という、『ウルトラマン』33話のバッドエンドを描いてみせたようなエピソードも印象的でした。メビウスを助けに来た初代ウルトラマンと全く互角の戦いを繰り広げ、引き分けて生還……と思いきや、皇帝の怒りを買って処刑されちゃうのが可哀想。


メフィラス星人(ウルトラゾーン)
「飯ってのは、一人で食うより、誰かと食うほうがうめぇんだよ」
かつて、宇宙人の自分を怖れずにもてなしてくれた、ホームレスの老人の言葉。その意味を知るため、今や地球の支配者となったメフィラス星人は人間を招き、老人から貰ったテーブルを囲んで食事を共にするのだが……
「人間文化に興味を示す宇宙人」「食事を介したメフィラスとの対話」「巨大フジ隊員のパロディ」と、今観るとなかなか『シン・ウルトラマン』の先取り感もある『メフィラスの食卓』。SFショートショートとしての美しさも抜群で、『ウルトラゾーン』必見の一本です。手掛けたのは現ウルトラシリーズを牽引する気鋭の若手・田口清隆監督。


メフィラス星人(ウルトラ怪獣散歩)
円谷プロ制作のバラエティ旅番組『ウルトラ怪獣散歩』のメフィラス星人。ついに番組の主役となり、メフィラス星人+ゲスト宇宙人2人の3人組で観光名所をぶらぶらする。
小粋なトークとアドリブで番組を進めるも、終盤になるとゲストにキレて(キレられて)殴り合いに突入し、ひとしきりウルトラファイトした後「よそう……」の名文句で雑に仲直りするのがお決まりの流れ。旅番組なのにも関わらず「怪獣の立ち入りはちょっと……」と断られる事が多いのを根に持っており、アウトサイダーの悲哀溢れるエンディングテーマも作曲していました。

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メフィラス星人(ウルトラマンオーブ)
惑星侵略連合の首領ドン・ノストラ。名前の由来はイタリアの犯罪組織、コーザ・ノストラか。
番組序盤の準レギュラー悪役であり、威厳を誇示するようなガウン姿が特徴。ナックル星人やメトロン星人、ババルウ星人達を従える大物だが、侵略のやり口はステレオタイプで、ジャグラス・ジャグラーからは「時代遅れ」と舐められている。ジャグラーを暗殺して怪獣カードを奪おうとするも失敗し、逆に「あんたの時代は終わりだ!」と斬り捨てられた。


メフィラス星人(ウルトラマンルーブ)
18話『明日なき世界』に登場。
高視聴率目指してADのザラブ星人をこき使う、宇宙テレビ局のディレクター。座右の銘は「やらせも演出のうち」。
決して悪人ではなかったのだが、上司(チブル星人)から打ち切りの圧を掛けられて進退窮まり、なりふり構わず過激な番組作りへと走るようになっていく。行き過ぎた成果主義の被害者。


アーマードメフィラス
鎧を纏ってパワーアップしたメフィラス星人。白銀に蒼を差した美麗なプロテクター部位と、右腕のブレードユニットが外見上の大きな変化。
『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』では意識を乗っ取られ終盤の強敵として暴れまわるが、正気に戻ったらペンドラゴンを助け恩返ししてくれる、中々のジェントル。
『メビウス外伝ゴーストリバース』では怪獣墓場からギガバトルナイザーを発掘しようとしていた。声には貫禄があるのに、ウロウロしてて落ち着きのない三下。
『ウルトラゼロファイト』ではベリアルの腹心・ダークネスファイブの一人「魔導のスライ」として登場。卑怯もラッキョウもない二代目系のメフィラス星人だが、実力は確か。人質のピグモンに結構優しい。


他にも数々のメフィラス星人がいます。特撮以外だと漫画『ウルトラマン超闘士激伝』のメフィラス大魔王なども人気が高いですね。

おわりに、私の好きな言葉です。


いかがだったでしょうか?これからもぜひ、メフィラス星人には様々な形で、地球人の心に挑戦を続けて貰いたいものですね。今後も、メフィラス星人と山本耕史さんから目が離せません!
 

 

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外星人メフィラスのデザイン画はこちらでチェック。庵野秀明氏のインタビューも必見です。
 

厄介なものが来ているようだ。
 

円谷イマジネーションでも配信していない、隠れた名作。『メフィラスの食卓』が収録されているのは4巻。
 

メフィラス星人主役の旅番組。バラエティ番組として面白く、ウルトラシリーズ由来のマニアックな小ネタも豊富で、一時期はずっと流してた程にハマってました。山本耕史さんをゲストに呼んで復活希望!