秋冷爽やかなる2022年10月上旬、玩具メーカー・千値練さんより『超光戦士シャンゼリオン アクションフィギュア』が発売されました。
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頭おかしいんかこのメーカー!?!?
版権がバンダイではなくセガにある、見るからに造形コストが嵩みそう、「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」といったメジャーシリーズではないので知名度が低め、カルトなファンの声がデカいだけで世間一般的な人気はさほどでもない……等々思い当たるフシが多々ありすぎて、S.H.Figuartsシリーズでもずっとスルーされ続けてきた鬼子のようなシャンゼリオンの可動フィギュアを、令和の時代に?????
ありがとうございます!!!!
シャンゼリオン、もう本当に明るくて楽しくて、大好きな特撮ヒーローですので、新作可動フィギュアが令和の世に手に入るなんて、むせび泣くほど嬉しいです……
フィギュアの話題に入る前に、シャンゼリオンについて少し。
『超光戦士シャンゼリオン』とは、1996年、テレビ東京にて全39話が放送された特撮ヒーロー番組。
東映の白倉伸一郎プロデューサーと脚本家の井上敏樹を中心に、メイン監督が長石多可雄、ヒーロー及び怪人デザインが篠原保、主演は後年『仮面ライダー龍騎』にて名物キャラクターの凶悪犯罪者・浅倉威を演じる萩野崇、シャンゼリオンのスーツアクターには名優・岡元次郎と、後の平成仮面ライダーシリーズに携わるスタッフ達(注1)が名を連ねており、いわば平成仮面ライダーの前身、プロトタイプ的な位置付けにある番組です。
注……平成仮面ライダーシリーズ2作目『仮面ライダーアギト』の立ち上げに当たり、白倉Pが脚本家の井上敏樹に話を持ちかけたところ、「シャンゼの時のスタッフでリベンジしようよ。絶対面白くなるよ」とふたりで盛り上がったとの事。出典: ユリイカ臨時増刊号 総特集平成仮面ライダー
「平成仮面ライダーのプロトタイプ的作品」と言えば聞こえはいいものの、プロトタイプというよりも若気の至りと呼ぶほうがぴったりくる、やんちゃで奔放な作風こそ『超光戦士シャンゼリオン』最大の持ち味。
「どこまでダメ人間が主役でもヒーロー番組は成立するのか」を見極める衝突試験みたいな主人公・涼村暁を筆頭としたエキセントリックなキャラクター達により、「2話が女装回」「犬に食べられて消滅するパワーアップアイテム」「割り箸の袋をコレクションする怪人」「裁判で有罪を下される主人公」「都知事選に出馬し敵幹部と票田争い」といったハイブロウなエピソードがひっきりなしに乱打される、癖の強い、いや癖しかない特撮番組故に、唯一無二の滋味をふんだんに含み、好事家たちの間だけで熱烈な人気を博しました。
ついでに、俳優の容姿が総じて良く、井上敏樹の十八番である男のホモくさいアツい関係性を強く押し出した作風の為、当時はかなりのやおい人気も獲得していました。
では、本題であるフィギュアの方を見ていきましょう。
箱!まず箱がとてもお洒落!!荘厳さすら漂わせるパッケージ。
公式ムックのシャンゼリオンバイブルやDVDボックスもそうでしたが、シャンゼリオンって中身はあんなおバカヒーローなのに、外面はいつもお洒落なのがなんか腹立ちません???あんなおバカヒーローなのに!おバカヒーローなのに!
フィギュア・プラモ趣味を長年やっていれば、外箱も淡々と処分するようになっていきますが、コレは久しぶりに、手元に置いておきたくなる箱。
内容物。
一通りは揃ってはいるものの、決め技のシャイニングアタックが再現出来ないのは少し残念。まあ、アレをやろうとしたらエフェクトにもう一体シャンゼリオンが必要になるので無理もないですが……
燦然。それは涼村暁がクリスタルパワーを発現させ、超光戦士シャンゼリオンとなる現象である。
シャンゼリオンの重厚さと煌めきが、クリアパーツ及び緻密なディテールで余すところなく再現されております。偏光マジョーラがうっすら吹いてあるのも美しく、これは買って良かった……ちなみにデザイナーの篠原氏曰く、シャンゼリオンのデザインコンセプトは「羽衣を纏う鬼」との事。
シャイニングブレード。全編を通して多用されるシャンゼリオンの近接武器といえばコレ。初期の名エピソード『ごめんね、ジロウ』においては決まり手となったのが印象深いです。
シャイニングクロー。ディスク交換でビームも撃てる万能武器。
ガンレイザー。前述のクローや超光騎士による砲撃と、派手な射撃手段が他にあるのでやや影薄め。
シャイニングブレードを接続してのスクラムブレイザーもしっかり再現できます。
そして鯖!付属品に鯖が付いてくるヒーローなんて、世界中の何処を見渡してもシャンゼリオンくらいのものでしょう。
本番組を代表するギャグ「サバじゃねぇ!」は番組中に2回あり、1回目となる10話『サバじゃねぇ!』では暁が生身で、2回目となる33話『サバじゃねぇ!2』では暁がシャンゼリオンに変身した状態で行われるため、本パーツは正確には『サバじゃねぇ!』再現パーツではなく、『サバじゃねぇ!2』再現パーツということになりますね。
ここ試験に出るんで、今日は覚えて帰ってください。
他社商品であるフィギュアーツアーツとのサイズ比。頭ひとつ大きい位は覚悟していたので、ほぼ同スケールなのは大変嬉しい仕様。実際は僅かに大振りではあるものの、シャンゼリオン自体、かの岡元次郎さんですら鈍重な動きにならざるを得ない程の超重量級ヒーローなので全然許容範囲。むしろマッシヴでよい。
同じタイミングで開封した、令和最新の井上敏樹ヒーローとツーショットで締め。
『超光戦士シャンゼリオン』はその先鋭的すぎる番組内容に、台詞と合っていない口パクや、まるでアダルトビデオのような画質も手伝って、視聴者を大きく篩に掛けてしまい、残念ながら一般ウケはしませんでした。
後年のニコ生で白倉&井上コンビが「井上さんと組んでまたシャンゼリオンみたいな失敗作を作りましょう!」「シャンゼリオンの映画なんかやったら東映がつぶれてしまうよ!!」とゲラゲラ笑いながら語っていたくらいなので、余程ウケなかったのでしょう。
しかし、00年代以降に隆盛を誇る平成仮面ライダーシリーズが、「ヒーローとはこうあるべき」よりも「こんなヒーローがいたっていいじゃん」を押し出し、より斬新で多様性に富むヒーロー像を提示し、見目麗しい二枚目キャラクター達の関係性で女性ファン層の新規獲得にも成功したことを思えば、『超光戦士シャンゼリオン』は間違いなく多角的な先見性を備えていた番組。
コメディ特撮として名を馳せる本作ですが、「普段おちゃらけていても、ここぞという時に女の涙をぬぐい、友を思いやれる男であればよい」「ヒーローよ滅私であるな。青春を楽しめ」といった、脚本家・井上敏樹の美学が炸裂しまくる熱いヒーロー番組でもあり、その後に井上氏の関わった平成仮面ライダーシリーズ、そして令和4年現在、白倉Pと再びタッグを組み全話の脚本を担当する現行スーパー戦隊、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』へ連綿と引き継がれていくエッセンスを随所にて感じられるので、是非一度は視聴されることをオススメいたします。ニチアサのオタク、もっとシャンゼリオンを観ろ!!!!
そして最後に、決してメジャーとは言えない『超光戦士シャンゼリオン』の、素晴らしい可動フィギュアを、令和の世に出してくださった千値練さん、本当にありがとうございました。
(絶対に予約しますので、黒岩省吾こと暗黒騎士ガウザーもお願いします……)