2021年11月6日、NHKBSプレミアムにて『全仮面ライダー大投票』の結果発表が行われました。
本記事ではこの『全仮面ライダー大投票』の結果について、これはと刮目したものについて雑感を述べたり、掘り下げていこうと思います。
全てのライダーに触れる訳ではないので、あらかじめご了承下さい。
龍騎 6位
私の最推しライダー。
リアルタイムで熱狂、感動、そして落涙させられたあの日々から、龍騎こそが仮面ライダー最高傑作であると確信し、微塵も疑っていません。
カードでモンスターと契約した総勢13人もの仮面ライダー達が、己の願いを叶えるためにバトルロワイヤルを勝ち抜く、そのアナーキズム溢れる作品コンセプトで特撮界隈を震撼させた龍騎。
放送当時は今じゃ想像もつかない位に激しく各所で叩かれ、特撮系個人サイトの掲示板に「龍騎の話題は荒れるので禁止」と注意書がなされていた所まであった位。これ程の問題児にして「平成仮面ライダーは面白ければなんでもあり」の贖宥状を身を挺し勝ち得た偉大な先駆者が、作品部門6位……は少し物足りない気もしますが、あの『クウガ』ですら4位にしてしまう、世代交代の向風が吹く中では仕方なし。
むしろ6位に踏みとどまれたのは、『龍騎』が今だ褪せない鮮花である事の証明と言えましょう。
気になったのは「ライダー部門」になると46位まで後退してしまう仮面ライダー龍騎・城戸真司。これはライダーが大所帯の作品ほど票が分散しがちな投票形式に加え、龍騎のデザイン自体の奇抜さや、バトルロワイヤル作品において戦いに消極的なキャラは伸び辛い面が出てしまったと考えます。
悲壮な決意を背負ってライダーバトルに臨み、真司に戦いの非情さを説くも、本人もメンタルが弱く苦戦を強いられがちなツンデレ系2号ライダーの元祖、仮面ライダーナイト・秋山蓮が35位。「脱獄囚ライダー」の肩書で視聴者の度肝を抜き、獰猛なバトルスタイルが男性層を、獣性の色気が女性層を(33話『少女と王蛇』を始め、上半身が露出するサービスカットが妙に多い)虜にしたナチュラルボーンバーサーカー、仮面ライダー王蛇・浅倉威は23位。 当時から大人気だったサブライダーが龍騎を上回っているのは納得の結果。私のイチオシである、スーパー弁護士・北岡秀一の変身する仮面ライダーゾルダが66位とやや振るわなかったのは残念ですが、でも先生……オレの中では、先生が1位っスから……!
曲部門では主題歌『Alive a Life』が13位の他、『Revolution』20位の、挿入歌としては破格の大健闘ぷりにニッコリ。この曲本当に素晴らしいんですよ。ナイトサバイブと対峙する龍騎が、負けじと《烈火》のサバイブをドローすると共に『Revolution』が流れ出す、あの高揚感たるや。龍騎後半の苛烈極まる作劇を5秒の刹那に閉じ込めた、擦りきれんばかりに切ないイントロもたまらない。そして私は仮面ライダーナイト・秋山蓮役の松田悟志さんが歌っていたキャラクターソング『Lonely soldier』にも票を投じましたが、残念ながらこちらは圏外。
エグゼイド 8位
準最推し。
私的に、平成2期では傑出してストーリーが面白かったライダー。
TVゲームと医療。この一見無関係な両軸を"ウイルス"のワードで接続し、「何度でもやり直せる命」と「一度きりの命」の対立・止揚をテーマにしたお話に仕立てる手腕には唸らされました。
並外れた勢いでお話をブン回していくスタイルながら、主役達を医療従事者とした事によりポリシーが明白で、本題からの逸脱・破綻を抑制している合理的なつくりも光る番組。エグゼイドの面白さならベスト5入りも狙えると期待していたものの、上位陣は途方もなく堅牢でしたね……
歴代でも究極にキワモノなデザイン故の限界、頭打ちを否応なしに感じてしまいます。
ライダー部門で目を引くのが檀黎斗こと仮面ライダーゲンムの19位。演者・岩永徹也さんのはち切れんばかりな怪演で大人気の悪役だっただけに、全仮面ライダー投票でも快進撃。
敵時にはこっぴどくボコられて視聴者の溜飲を下げ、味方化する際はしっかりとお膳立てがなされ、不謹慎な復活ギャグも読み解いていけば達観した死生観が見えてくる、所業が悪辣な分へイトコントロールにも細心に気を遣われていたキャラクター。99からだんだん減っていく彼のライフ残量は番組後半における縦軸の一部を担っており、強く関心を寄せていた視聴者も多いのではないでしょうか。最終回後はまた敵に周るブレなさで、更に一段階評価を上げた感じ。ブゥゥゥン!!
主題歌の『EXCITE』はなんと音楽部門1位。歴代ライダー主題歌で初のオリコン1位を獲得しており、三浦大知さんはこの曲で紅白にも出場した、エグゼイド抜きにしても強力なヒットナンバー。
当時は職場のラジオから相当な頻度で流れてきて、その度「宝生永夢ゥ!」「やめろー!」「それ以上言うなー!」のシーンが頭をよぎり、堪えるのが大変でした。
オーズ 3位
推し。
「人間の欲望」を主題とし、儒教やアリストテレス哲学的な「中庸たれ」の示唆を織り込んだ寓話的ストーリーはブレる事なく一貫しており、それでいて堅苦しくなく、愉快で娯楽性に満ちた作品。
無欲な旅人・火野映司と手だけの怪人・アンクとの、男同士の一筋縄ではいかない関係性が最大の見所であるため、女性人気が高い。大人の色気ムンムンで豪放磊落な2号ライダー・伊達さんや強欲で強引だけど憎めないハッピーバースデイおじさん・鴻上会長といった個性的なサブキャラも選り取り。放送当時に凄絶なコアメダル争奪戦を引き起こしたほど玩具販促も上手く(組合わせで100通り以上のフォームを生み出すメダルチェンジが本当に楽しい)、そして極めて綺麗に着地してのけた最終回は、目の肥えたシリーズファンをも唸らせました。
とどのつまり全方位に高打点の番組であり、放送時期的にも本投票のボリュームゾーンに刺さりやすい為、ベスト3に入るのは極めて順当。秀くんとりょんくんのライダーが大人気で俺も鼻が高いよ……
中盤にストーリーがやや停滞するのがネック。前番組で、同じく完成度が極めて高い相棒物の『W』に一歩上を行かれているのは、ここが原因でしょうか。
鎧武 12位
推し。
いい位置。まさに準強といった所。以前に単独記事を書いた程なので、個人的な思い入れは12位どころではありませんが……
龍騎と同様の大所帯作品である為、ライダー部門では票の拡散が見受けられるのがちょっと残念かな。1番人気が鎧武を差し置き斬月なのは納得。流石呉島主任だ。
外部クリエイターが大きく関わる製作体制から結構荒れたライダーで、嫌いな人の声を今もちょくちょく耳にはするものの、しっかり評価されていますね。
アギト 18位
推し。
アギト、毎回この手の投票で苦戦しがちですよね……
ライダー達の集結は要所要所に留め、あかつき号事件の謎を軸にグランドホテル形式のドラマを展開させた、未だ歴代でも類を見ないストーリー構築が最大の持ち味。群像劇によって紡がれていく骨太な人間賛歌が胸を打つ一方で、物語の底を静かに流れる壮大な裏設定も名物です。
そして忘れてはならないのがシリーズ髄一の面白さを誇るコメディパート。後続のライダーにありがちな、変顔や大げさな身ぶり、SEで笑いを取るタイプとは一線を画す、台本の地力で笑わせてくるコントは高いユーモア値を誇る。番組中、伝説の豆腐コント(23話)にしっかり触れてくれた氷川誠役・要潤さん&VTRを流したスタッフ、あんた達最高だよ……
『クウガ』は作風が独特で1発限りの要素も多かったため、平成ライダー2作目ながら、シリーズの雛形・基底としての趣が強いアギト。故にベーシックで特徴の無い印象を与え易く、孤高のクウガや、問題作の龍騎に挟まれどうしても地味なのが泣き所。「タイプの違うライダーが3人も登場!」の惹句、放送当時は本当にド派手だったんですけどねえ……龍騎、主にお前のせいだぞ!!!!
そういう自分自身も、アギトは大好きだが龍騎やエグゼイドのやや後ろに置きがちで、投票で苦戦するのもなんだか頷けてしまう。好きなんだけど一番にはなりにくいタイプ。
でも、本当に面白いんですよ、アギト。
カブト 20位
最高に格好いいライダーと諦めたシナリオを併せ持つ、俺達のカブト。
作品部門ではさほどでもない順位なのに、ライダー部門では6位と凄まじく、ファンもアンチも「ライダーは格好いいけどストーリーがひどい」で意見一致してしまう、『カブト』という作品のイデアを忠実に切り取った結果といえるでしょう。似たような不遜俺サマ系ライダーの『ディケイド』もぴったり同傾向を示しており(順位まで隣接)、カブト及びディケイドの位置で、本ランキング全体の精度が担保されているように思います。
「ストーリーがひどい」との評価が固着していますが、確かに縦軸の整合性は壊滅的であるものの、エピソード毎の打点はむしろ高い方。風間大介や神代剣を巡るお話の終着点も今尚高く評価されていますし、突き抜けた個性と顔の良さを誇るキャラクター達が織り成す変人絵巻は、観るものを決して退屈させません。
ついついリピート視聴してしまう、愛すべき特撮番組。
クウガ 4位
すさまじき 世代交代の 波を 感じる 戦士 クウガ。
本来申し分無い順位である筈なのですが、"あの"クウガがベスト3に入らない時代かあ……の気持ちはやはり抑えがたく。
昭和仮面ライダーの視聴リテラシー・お約束としてなあなあに容認されていた領域への、鋭い踏み込み。ツッコミ所潰し。このクウガの面白さの本旨が、そもそも昭和ライダーを観たことがない今のシリーズファンに、だんだん刺さりにくくなってきてるのでしょうか。
とはいえ4位。もう20年より昔の番組ですし、登場ライダーも1人しか居ないことを鑑ればやっぱり凄い。暴力の哀しみを真摯に訴えるメッセージ性と、ライダーと警察の連携がグロンギを討つヒーロー性。この両面を圧倒的な完成度で融合させ、肌がひりつくようなリアリティで描き出した本作に、根強い昔からのファンのみならず、今なお心奪われる若人も多いが故の"4位"なのでしょう。
V3 25位
昭和ガンダム、昭和ウルトラマンと比べ若年層への訴求力がいまひとつな昭和ライダーですが(平成に客演時のいまいちな扱いや、『宇宙世紀』『光の国』といった独自ユニバースが形成されていないのがやはり痛い)、しっかりランクインしてきた所にV3の凄みを感じます。
V3、面白いんですよ。なんたって全盛期の宮内洋さんが演じる風見志郎!優等生的な本郷や一文字ともまた違う、射抜くような鋭い眼光をテレビのこちら側へバッシバッシ送ってきて、たまらなく格好良い。武器と生物を融合させた、暴力の匂い漂う造形の初期~中期デストロン怪人も魅力的で、番組初期から2体での共同作戦でV3を幾度も追い詰めていますし、ハンマークラゲやハリフグアパッチ、ピッケルシャークなどの強豪怪人との戦いも手汗握らずにはいられません。後半にライダーマンの投入で連続ドラマ要素が出てくるのもオッ!と唸らされました。
そしてV3といえばPSのゲーム『仮面ライダーV3』。大野剣友会による当時の殺陣が忠実にモーションへ組み込まれており、昭和特撮の泥臭い格闘をゲームで完全再現できた傑作特撮ゲー。変身前の姿で遊べるモードまであり、風見志郎に結城丈二のみならず敵幹部の人間態、そしてなんと立花藤兵衛や純子さんまで使える異常な拘りよう。私のV3への思い入れは本編より、むしろこのゲームで醸造されたのかな。
ビルド 5位
戦争に人体改造、暴走といったハードなテーマを扱い、強敵が友へと転じる少年漫画的展開、SF色濃いif日本世界観、キャラ立ちまくりなヴィランと男心くすぐる要素を多数取り揃え、物語の主軸である、頭脳明晰で洒落た主人公・桐生戦兎とバカで熱い2号ライダー・万丈龍我のバディも高い女性支持を獲得している本作。比較的近年の放送作品でもある為、相当上位であろう事は読めていましたが『龍騎』『ファイズ』超えまでとは。
いや~強い。ビルドおめでとう。
特筆すべきはグリスの10位。3号ライダーとしては凄まじい快挙である。変身者のカシラこと猿渡は強敵、頼れる仲間、シリアス、ギャグ、ロマンスと何をやらせても高水準で、剛毅なだけでなく細やかに気配りの出来る面も活写された、とても魅力あるキャラクターでした。2号のクローズも内訳では大量の女性票を獲得し(グリスが男性票主体なのと対照的)、堂々の11位。まあ、可愛いげがありますからね万丈は。
ストーリー面では前にも観たような展開を反復しがちなのが気になりますが、熱量は太鼓判もの。欠点を上回る長所を押し出せていた好例。
ジオウ 22位
まだまだ近年の作品にしては少しパッとしない位置。茫洋とした我が魔王こと常盤ソウゴ、魔王を倒す使命を帯びながらソウゴに惹かれていく2号ライダーのゲイツ、ソウゴに振り回されるうち人間味を獲得していく預言者ウォズと、客演が目玉のアニバーサリー作品ではありつつオリジナルキャラクター達がとても魅力的であった為、もっと健闘すると思ったのに……
その一方で綺麗な平成ライダー総括『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』が14位、汚い平成ライダー総括『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』が13位と、主役映画2作がダブルランクイン。特に『Over Quartzer』はジオウのファイナルとしてもかなり盛り上げていましたし、TVから大きく票を吸っていそう。
『Over Quartzer』は主題歌『P.A.R.T.Y. 〜ユニバース・フェスティバル〜』も曲部門4位の大快挙。天皇陛下の生前退位でも歌われていた(歌われていない)平成に捧ぐアンセムが、名曲揃いのTV主題歌、挿入歌を押し退けまさかのベスト5入りを果たしました。Every Body👨👩👧👧👨👧👦 シャッフル🔀しよう世代👶🔀👵連鎖⛓するスマイル🙂➡️😃➡️😂Let’s Party 👯♀️🕺🏻👯♂️エンジョイ🎉しなきゃもったいない🤷♂️だって人生は1回☝️1️⃣🔚レインボー🌈は空だけじゃない胸にも架かるぜ🌈💖🌈🙆♂️どんなミラクル🧞♂️💰も起き放題👍ユニバース・フェスティバル🎉💃🛸🕺🎉
ファイズ 7位
クリフハンガー性の非常に高い番組構成で、引きと予告から「次回どうなるんだよ!?」と毎週強烈な期待感を抱かせるが、肩透かしな回収をする事も多く、リアルタイム時の盛り上りが冷めると人気は維持出来ないかな……と放送当時にぼんやり思っていましたが、全く杞憂の大人気。
主人公"乾"の名が示すように、シリーズでも随一のドライで無情な作風が持ち味。救えなかった物も多いヒーローでした。対立・不和で物語を回しがちなため癖は強いものの、近未来メカニカル路線のライダー及びガジェット、モノトーンの色彩と精緻な造形が目を引く怪人・オルフェノク、ミーム化している強烈無比な2号ライダー・草加雅人といったファクターは、今も根強く視聴者の心を掴んで止まず。
平成2期の時代において質の高い客演に恵まれていた数少ないライダーでもある為、若年層も呼び込めたのかなと。
個人的には周囲への布教が大成功したライダーであり、男女色々な人とワイワイ観た、楽しい思い出があります。普段特撮に縁がない人も沢山観てくれたので、少しくらい陰鬱な作風のが「仮面ライダーこんな事やってんの!?」と、フックになりやすいのかも。
ブレイド 11位
突然のBOARD壊滅、癖になるサイレン音、何故か見ている橘さん、トドメにあの滑舌……
今でこそ「伝説の1話」と笑っていられますが、リアルタイム放送当時にネットがお通夜ムードに包まれてしまった時の沈痛な空気は、本当にいたたまれないものでした。
初期はオンドゥルネタで誤魔化さないと観ていられない程だったが、ギャレンによる伊坂撃破前後からだんだん面白くなっていき、主題歌が『ELEMENTS』に変わる後半戦突入時にはもうすっかり、胸を張って他人に薦めていいライダーとなっていた時は、手間のかかる子が、ようやく補助輪無しで自転車に乗れたのを見届けたような感慨深さがあったものです。
長い諍い(本当に長い)を経てしなやかに結ばれたライダー達の絆の心地よさ、ルールに則した上で伏線もぬかりない「二枚のジョーカー」、始がようやく手に出来た平穏に、剣崎の決断がもたらす代償と、様々な想いが駆け巡ってとりとめがなくなる最終回は、歴代屈指の素晴らしさ。
作品が古くなれば若年層から触れられにくくなっていくものですが、剣はオンドゥル語や天野浩成さんの人柄がウケのいい呼び込みとして機能し、本編の面白さとの二段構えで新規ファンも継続的に獲得出来ているんじゃないかと推測。剣初期の不評は龍騎、555の後にまたギスギスいがみ合う路線が続いた事への辟易も大きかったので、後追い視聴する人にはあまり関係無く、序盤のしんどさがかなり軽減されるのも強みか。
ゼロワン 10位
令和の1号へ寄せた強い期待から一転、ストーリーやキャラクターの支離滅裂さに深く失望させられたライダーでした。
しかし、見目華やかな俳優陣達、新時代の到来を予期させるライダーのデザイン、クールなガジェット音声、彩やかなエフェクトを添えたハイレベルなアクションと、物語以外の構成要素はいずれも一級品な為、加点方式で見ていくと10位の高順位にも頷けます。ゼロワンの持つポテンシャルを縦横無尽に引き出した快作『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、映画が終わったあとすぐさまもう一回チケットを買い二周した位に、本当に素晴らしかった。
現状既に高い人気を誇るので、これでお話がストライク、いやガーターでさえなければベスト5入りも余裕だった筈。惜しくてなりません。
W 2位
俗に「平成2期」と呼称される作品群の嚆矢となるライダー。
腹黒い女性キャラが沢山出てくる事でも有名。
探偵物らしく前編で出題、後編で回答を行う合理的な2話完結構成が特徴。舞台となる架空の街『風都』の作り込み、展開を遅延させがちな内輪揉めの抑制、『クウガ』以来ようやく後継が出てきたと思わせるタクティカルなフォームチェンジ描写等、ここまでの大多数の平成ライダーとは一線を画す端正な仕上がりであり、当時視聴していて、「あれ……ライダーなんか変わった??」と、新時代の幕開けを強く感じられたものでした。
作品全体のテーマやフレーバーをハードボイルドで纏めているのが恰好良く(レイモンド・チャンドラーやヘミングウェイの引用があるのもソレっぽい)、今も漫画『風都探偵』となって連載されていたりする大人気ライダーなので、堂々のシリーズ2位も納得。
翔太郎&フィリップの名物バディや、「俺に質問をするな!」の語気鋭い照井竜といったライダー達のみならず、「ミステリ物の犯人はもう一人の主役なんだから、怪人も目立たないとダメでしょ」との塚田Pのポリシーにより、怪人・ドーパントの存在感も大きかった本作。敵と、そして主人公達も使用する『ガイアメモリ』の能力は多岐に渡るため、単一の物差しでは強弱を測れない、能力バトル的な戦いが繰り広げられるのも大きな魅力でした。
ライダー個人部門ではエターナルの17位が驚異的。23位の王蛇や、19位のゲンムといった強豪を抑え悪のライダートップに君臨しており、幾人かの主役ライダーよりも高い程である。
当時時点で悪のライダーなぞ既に珍しくなかったにも関わらず、極力ライダー同士は戦わないし勿論悪のライダーも居ない作風をTV本編で徹底したおかげで、『劇場版仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』での登場に存分なプレミア感を発揮できたのはシリーズ構成の妙であろう。TV本編OPでのWと正反対の構図(白昼、画面左側の位置取り、たなびく黒のマント)で劇場版OPを飾る姿といい、「地獄を楽しみな!」をポリシーに風都を恐怖に陥れる暴れぷりといい、『AtoZ』を観てエターナルに痺れない奴は不感症だろ!!! バンダイさん真骨彫再販して下さい。
電王 1位
やはり電王は強かった。
否、強すぎた。
電王に関する何かしらがあらゆる部門でベスト5入りしているのみならず、現行ライダー・リバイスが1位の9歳以下部門ですら4位をキープする化け物。既に世代間継承が行われているのが見て取れる為、数年後のランキングでは更に2位以下を引き離していると思われます。
キバ 圏外
正直、ああ……やっぱり……という感じ。
なんせ私もリアタイ時は、フラストレーションが募るあまり、たまらず視聴脱落しちゃったものである。
しかし、数年後DVDで一気観したら悪印象ががらりと一変。
キバ、こんなに面白かったのか!?と、溢れ出す感情がこの胸を突き破り、もう夢中で最終回まで観てしまいました。
確かに、端正さや完成度を誇る番組ではありません。スッキリしない鬱々とした話が続き、販促アイテムやフォームチェンジの活用も下手、ド下手と言ってもいいレベルでしょう。
しかし、「男女恋愛」をストーリーの中心へ据え、"愛"には"憎"が伴う摂理に、目を背けることなく向き合う仮面ライダーは、キバだけです。この題材においては本番組、全くブレず、積み重ねも心象描写も驚くほど丁寧。激しく行き交う男女の情念を、心には嘘を付けないが故の哀しい決断を、胸を詰まらせながら見守らずにはいられなかった。恋愛を「男を成長させる一大試練」とみなす脚本美学により、なよなよしかった主人公・紅渡の成長物語に繋げているのも、うまい。1話時点では幼馴染みの女の子・静香ちゃんが一緒じゃないと近所に挨拶も出来なかった渡が、最終回間際で彼女と再開した頃にはすっかり男の顔になっている場面なんて、自然と涙がこぼれた程である。
現在・過去の二部構成も、本番組を複雑かつとっつきにくくしている戦犯要素だが、無駄ではない。このつくりを活かした、血潮燃ゆるような名場面だって多い。名物2号ライダーのイクサこと名護さんに代表される、初めは視野が狭くてどこか余裕の無かった人達が、だんだん険も取れて柔らかくなっていく様も愛おしい。音楽が題材の仮面ライダーだけあって、楽曲のレベルが非常に高いのも魅力だ。
特撮ヒーロー番組として「ここが達成出来ていれば高得点」とされがちな項目の多くでは、残念ながら赤点である。が、このライダーでしか摂取できない滋味がとにかく深い、そんな番組なのだ、キバは。敬遠がちでまだキバを観ていない人は、是非とも一歩を踏み出して頂きたい。
そして至りましょう。暁が眠る、素晴らしき物語の果てに。
おわりに
『全仮面ライダー大投票』、かなり妥当な投票結果だったのではないでしょうか。
放送当時における視聴者の空気、固まった評価、後年の商品展開、形成されたファン層やミームとしての定着度、世代変遷、そして自分自身が肌で感じた作品の癖……等々を動員し照らし合わせていくと、概ね腑に落ちる順位が出たな、というのが率直な感想です。
昭和ライダーから平成ライダー1期へ、そして平成ライダー1期から2期へと、着実な世代交代を確認できたのも本ランキングの大きな意義。
平成1期初期が青春だった私としては寂しくもありますが、ファンの代謝が進んでいるのはコンテンツが壮健な証。女性票が全体の33.9%を占めていた事といい、仮面ライダーシリーズの、変化を恐れない柔軟で野心的な試みが、将来的にはしっかり結実していたのを肌感覚で感じられたのは喜ばしい限り。
これも『クウガ』『アギト』と、比較的素直に昭和デザインを拡張していったライダーの後で、異物感に満ち満ちた『龍騎』を出せたからこそ今があるんですよ!!!!龍騎はそれだけスゴい作品なので、観ていない人はすぐ龍騎を観てですね、数年後にまた全仮面ライダー大投票が企画された際には、是非、是非とも仮面ライダー龍騎に一票を投じて下さい。キバにも投票して下さい。
(現行のリバイス、かなり面白いので将来の投票でどうなっているかが楽しみ……)