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観たものや読んだものの感想など

映画『とびだせ!ならせ!PUI PUI モルカー』を観てきました。

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2021年1月より、テレビ東京系の子供向け教育番組『きんだ~てれび』内の1コーナーとして全12話が放送された『PUI PUI モルカー』。

手作りフェルトのぬいぐるみがミニチュアの舞台で寸劇を繰り広げる、ストップモーションアニメならではの手作り質感がもたらす素朴なかわいさ。

かわいいだけに留まらない。作風全体にほんのりと香る毒気。迫力のカメラワークを伴う激しいアクション。有名作品のオマージュやアッと驚くSFオチまで、視聴者を飽きさせまいと投入された潤沢なアイデア。

秒間あたりのコマ数24、1日の撮れ高がおよそ4~5秒の過酷な制作状況下で真摯に追及された事が窺える、細やかな演出効果。

知り尽くしたと思うたび、新たな側面が加わる愉快で魅力的なモルカー達。

キッズ番組の1コーナーという、本来、インターネットで大きく注目される事は稀なコンテンツながら、そのハンドメイドにしてウェルメイドな作りは多くの大人をも魅了。2分40秒×12話。その一般ドラマやアニメ、特撮番組に比して格段に短い尺にも関わらず、『PUI PUI モルカー』はかけがえの無い映像体験を視聴者にもたらし、2021年3月23日、惜しまれつつ放送を終了しました。

私も「いや~これはいいもん観たなあ……」と総立ち大喝采を送る想いで、最終回に寄せた感想記事を書いたものです。

www.deldeldelta.com


そんな『PUI PUI モルカー』がこの夏、劇場版MX4D・3D映画として銀幕デビュー!?こ、これは是非観に行かねば……!!

とびだせ!ならない!PUI PUI モルカー

とはいえ本映画、残念ながら完全新作にあらず。TV放送の全12話を繋げ、そこにMX4Dや3Dなどの劇場効果を付与した、やや急場しのぎな代物。
『PUI PUI モルカー』はネットでバズるに留まらず、思いの外多方面に「イケる!」と評価してもらえたようで、放送中は大阪のお好み焼き屋位しかなかったタイアップ先もグンと伸び、放送より数ヶ月遅れでようやく、プライズのぬいぐるみやステーショナリーといったグッズがリリースされてきたのが近況だ。
が、最も望まれているであろう「新作映像」だけはどうにもならない。人形を1コマ1コマ動かしながら撮影する手法上、莫大な手間を要し、どうしても寡作になりがちなのがストップモーションアニメ。放送終了からの短期間で新作映画をこさえるのは流石に無理だった。

まして『PUI PUI モルカー』は今でも、youtubeやamazonプライムビデオ、Netflix等で観放題配信されているコンテンツ。
私も映画そのものにバリューを求めるというより、楽しませて貰った記念・新作への祈願を込めて映画館に来たようなもの。
なので流石にそこまでの客入りは…………


居る!!
チケット予約画面では予想外に、みっちり、座席が埋まっている!!!


ロビーに居た客層は2~4人位の女の子グループ、次いでカップルが目立つ。大学生くらいの男性やおじさん、老人、外人と層も幅広い。「モルカー、愛されている……!」と思わず目頭も熱くなりました。
が、肝心の子供は全く見かけず。実際の所、本来のターゲットにウケてたのかどうかが気掛かりで、モルカーに目を輝かせる子供を是非とも確認してみたかっただけに、残念。他の映画館では子供も沢山入っていた事を祈りつつ、スクリーンへ。


そこで、更に残念な出来事が!

入場者プレゼントの「ならせ!モルカーボール」が貰えない!!!


こ、これは悲しい……

私が観たのは公開2日後の日曜上映回。映画の公開規模的に、さほど潤沢に用意されていたとは思えないモルカーボールが無くなるには十分な時間が経過していたと言っていいでしょう。

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「数量限定・先着順」「劇場により数に限りがございます」としっかり書いてありますね。

ならば観るのは必然「公開初日の7/22orボールの種類が変わる7/30」の二択だった筈。見積りが甘かった。
『とびだせ!ならせ!PUI PUI モルカー』を観に来たのに、『とびだせ!ならない!PUI PUIモルカー』になってしまった。

入場特典の枯渇は、想定以上にヒットしている証左として嬉しくもあるが、やはり悲しい。
PUI PUIが鳴らせない。聴こえない。
俺はモルカーを応援できない……


果たしてそうだろうか。
ベートーベンが『田園』を作曲したとき、既に耳は聴こえていなかったという。彼は心で草木のそよぎや風の声を聴き、心で曲に織り上げたのだ。ならば今ここに「ならせ!モルカーボール」が無くたって、人は心でPUIPUIを鳴らし、心のPUIPUIを聴く事だって出来る筈……!


あっ!シロモが銀行強盗に絡まれてしまった!!(PUIPUIPUIPUI……)

アビー泣かないで!!そのままゴールすれば1位よ!!(PUIPUIPUIPUI……)

吐き出せテディ!!その畜生を吐き出せ!!(PUIPUIPUIPUI……)

お姉さん起きた!!みんなはやく隠れて!!(PUIPUIPUIPUI……)


……


映画も終わったのでグッズ売り場に。
映像よりこちらが本命の方も多そうなだけあり、かなりの捌けよう。
シロモやアビーといった、活躍が印象的なモルカー達のマグカップやステッカーはしっかり売り切れている中、メインモル中、唯一主役回の無いチョコちゃんが苦戦を強いられ、余り傾向にある光景に胸が締め付けられる……!2期では是非ともチョコちゃんに主役回がありますよう、切に望まずにはいられません。

特筆すべきはパンフレット。なんと全話全シーンの絵コンテ集が丸々収録されており、副読本として充実の情報量を誇ります。ポテトのドライバーがコンテ段階では男性(1話)、ゾンビは車に乗ってモルカーを追いかけてくる(6話)等、初期案と放送版との差異が確認できる他、銀行から出てくる強盗と警察との戦い(2話)、レースにピットインしてくるリーゼントのレーシングモルカー(4話)といった、尺やテンポの都合でお蔵入りになったとおぼしきシーンも随所に見てとれ、本編を何周も視聴するディープなモルカーファンにはたまらない代物。「食べているモルカーとゾンビを見て満足げに耳をパタパタさせる」ハンバーガーモルカー(6話)や、「ダンスは終わったのにまだ1人ノっている」警察モルカー(9話)のように、演出意図や心理描写の補足もありますので、絵コンテ集を熟読し、再度モルカー本編を見返してみるのも楽しいんじゃあないでしょうか。

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ハンバーガーモルカー、聖人か??

いつの日にか新作を

劇場版の公開期間が延長となったり、突然ガンダムとコラボレーションしたりと、続々と景気のいい話が舞い込んでくる『PUI PUI モルカー』。


しかし……やっぱり新作が観たい!!


たった34分の、しかも新規ではない映像作品が、劇場版としてしっかり興収1億を超えている事に着実な人気を感じられるのも嬉しいですが、いずれは見里監督の「面白さの骨法」がふんだんに投入された、キュートで、ワンダーで、少しブラック(大いにブラックでも一向に構いません。『マイリトルゴート』のように。)な完全新作ストップモーションアニメを観る為、映画館へ脚を運ぶ日が来る事を心待ちにしています。


そしてもし『PUI PUI モルカー』に続編があるとしたら、その時こそ是非、高級モルカーを夢見ているチョコちゃんに主役回を……